近年、SNSの活用が政治の世界でも当たり前になりつつあります。しかし、その一方で、SNS運用を巡るトラブルも後を絶ちません。今回は、兵庫県知事と株式会社merchuの間で起きた問題を、ウェブ制作会社の視点から3つの視点で深掘りし、事件の背景と教訓を解説していきます。
1. 請求書の内容と料金は妥当?SNS運用の報酬は支払われていない?
まず初めに、請求書の内容と料金についてです。請求書に記載されている内容を見る限り、ポスター制作費やスライド制作費といった、一般的なウェブ制作の範囲内での料金設定となっていると考えられます。
そのため、請求書の費用には、SNS戦略の構築や運用といった、実質的なSNS運用に対する報酬が支払われていない可能性が高いのではないかなと思っています。SNS戦略に費用を含めるともっと高額な金額になるのではないかなと思います。
2. 株式会社merchuはSNS戦略の構築や運用を行っていた?
では、株式会社merchuは、SNS戦略を行っていなかったかというとそうでないと思います。
SNS戦略は、ある程度の知識のある人が、夜通しSNSをチェックし、投稿や動画の切り抜き、加工編集が必要になります。兵庫県でうねりを産むほどのSNSであったのであれば、やはり専門家がSNS戦略の構築や運用を主体的に行っていたと考えられます。
SNS戦略の企画・運営は、単なるデザイン作成だけでなく、ターゲット層の分析、コンテンツの企画・制作、効果測定など、高度な専門知識とノウハウを必要とする業務です。ただその業務の対価としての報酬は得ていないので、株式会社merchuは、無償でSNS運用業務を行っていたのではないかなと思います。
3. noteでの情報公開が招いた問題
以上のことから、今回は無償でSNS運用を行っておりボランティアでの参加になりますから、大きな問題にはならないのではないかなと思うのですが、今回は、株式会社merchuの代表がnoteに公開した内容が、今回の問題を大きく複雑化させました。
なんとなくですが、「特定の政治思想に基づくボランティアではない(いろんな政治思想を持っている人から仕事を受けますよ)ということ」をアピールするために、「仕事として関わった」と書いたんじゃないかなと思うのですが、それが一番の問題だったんじゃないかなと思います。
なぜそういうふうに書いてしまったのか?
一番は、成果をアピールしてもっと大きな仕事が欲しかったんじゃないかなと思います。ただ、個人情報やお客様の仕事を晒すようにnoteに書いてしまったのは問題だったかもしれません。
- 顧客情報の漏洩の可能性: noteは不特定多数が閲覧できるプラットフォームです。顧客が特定できるような情報を公開することは、NDA契約義務違反となる可能性があります。
- 虚偽の情報の掲載: 株式会社merchuがnoteで公開した内容の一部は、事実と異なる可能性があります。それはボランティア(無報酬)で行ったのに、仕事で行ったと書いてしまったことです。
- 承認欲求が招いた結果: 株式会社merchuの代表は、noteでの情報公開によって、自身の存在感をアピールしたいという承認欲求に駆られたのかもしれません。
NDA契約と契約義務違反
もし、株式会社merchuと兵庫県知事の間でNDA(秘密保持契約)が締結されていた場合、株式会社merchuは契約義務違反となります。NDAは、取引先との間で秘密を守ることを約束する契約であり、この契約に違反すると、損害賠償請求などの法的措置を取られる可能性があります。
今後の収束の方向性
今後の収め方としては、株式会社merchuから「noteで公開した内容の一部は虚偽でした。お詫びして訂正します。」というような発表があれば収束に向かうかもしれないような気がしますが、その場合、虚偽となってしまったnoteの返金対応などが生じるでしょうから、一筋縄では行かないかもしれないですね。
事件の教訓とウェブ制作会社が学ぶべきこと
今回の事件から、ウェブ制作会社が学ぶべきことはたくさんあったような気がします。
- 契約書の作成と内容の重要性: 契約書は、トラブル発生時のために必ず作成し、内容をしっかりと確認することが重要です。特に、SNS運用に関する契約では、業務範囲、報酬、秘密保持、著作権など、詳細な内容を盛り込む必要があります。
- 顧客情報の取り扱い: 顧客情報は厳重に管理し、外部に漏らさないように注意する必要があります。
- SNSでの情報発信の注意: SNSでの情報発信は、個人だけでなく企業の評判にも大きな影響を与える可能性があります。慎重な情報発信を心がける必要があります。
まとめ
兵庫県知事と株式会社merchuの間で起きた問題は、SNS運用の複雑さと、契約の重要性を改めて浮き彫りにしました。ウェブ制作会社は、今回の事件を教訓とし、より一層顧客との信頼関係を築き、質の高いサービスを提供していくことが求められます。かもしれません。